便宜上、リクエスト系に置いておきます。
こちらの空想学者診断(http://shindanmaker.com/423818)で素敵な学者を引き当てた美月が胸熱になって書いたお話。登場キャラの皆さんも、診断を元にしています。
※診断では性格・口調などには言及していなかったため、美月がキャラ化して補完しています。
※フォロワさんのイメージとキャラの様子はイコールではありません。あくまでも、「キャラとして」美月が作成した形になります。
それぞれの診断結果は次の通り:
美月(@JugoyaMizuki):"美月さんは、宝石歴史学者です。世界中の宝飾品のデザインや加工技術を研究しています。竜の結晶と月光の雫石が宝物です。亜麻色の髪に葡萄酒色の瞳をしています。浮城学者と親しいです。"→ルーン・ボーテ
りふらさん(@Az_alea):"Az_aleaさんは、色彩学者です。無彩色の中に幾億の色を見いだすことができ、他人とは違った極彩色の世界で生きています。赤色の髪に銀色の瞳をしています。色彩学者と親しいです。"→ソーワ・フィーユ
あやなみどりさん(@ayanamidori):"あやなみどりさんは、造園学者です。天使の庭園と悪魔の庭園について研究しています。自宅にも美しい庭園を造り、庭を愛でています。にび色の髪に青色の瞳をしています。昆虫学者と親しいです。"→テッシュ・ピジョンヌ
トダネエさん(@TODAnee):"トダネエさんは、恋愛心理学者にして悪魔です。恋する男女の惚れた腫れたを嘲笑いながらも愛を持って研究しています。紫色の髪に葡萄酒色の瞳をしています。歴史学者と親しいです。"→スー・ポート
柊水仙さん(@narciss270538):"柊水仙さんは、幻獣医学者です。怪我や病に苦しむ人外の生き物たちを保護し治療する活動をしています。烏天狗と友人です。金色の髪に薔薇色の瞳をしています。文学者と親しいです。"→ナーシス・ウーブ
祥助さん(@Meguru_link):"祥助さんは、神話学者です。世界中に伝わる伝承を研究し、書籍も発行しています。夜空と金平糖の神話がお気に入りです。金色の髪に黒色の瞳をしています。人形学者と親しいです。"→パール・シュワーズ
そしてマイルール:実際にフォロワ同士であるならすでに友達。そうじゃなければ初対面。
を適用して書きました。
長くなってしまいますが、続きからどうぞ…
長すぎて1つにまとまらなかった(多分纏まるけど、もう分けちゃったとだから面倒くさくなってしまった、ともいう)ので、パート2は
こちらです。
ここは学者街、ヴィル・デ・サバン。実に様々なものを調べ、学び、世界に還元しようとする学者たちで溢れている。もちろん、全員が同じ志を持っているわけではないが、研究に対して情熱を持っていることは相違ないだろう。少し変わった、それでいて愉快な学者たちが繰り広げる1日を少し覗いてみようではないか。
とある1日。朝から天気も良く、すがすがしい1日の始まりである。学者街の居住区では、この街に居を構える学者たちが朝からせわしなく動いていた。朝は貴重な時間である。ある者にとっては研究対象であり、別の者には睡眠を開始する事を意味する。もっとも、その他大勢に対しては1日の始まりを意味していた。
そんなその他大勢の中の一人、ルーンは居住区を歩いていた。胸元には自身の宝物である竜の結晶から作られたペンダントが揺れている。お守りとしての効能があると言われており、宝石歴史学者として一歩を踏み出す前に出会った一品だ。その洗練されたデザインと加工技術に宝石歴史学、それも世界中の宝飾品のデザインと加工を専門に研究する事を決意し、今に至る。専門家らしく丁寧に手入れされており、その美しさは全く損なわれていなかった。
「おんやぁ、あれはソーワかなぁ?」
ルーンは大きな眼鏡の奥にある葡萄酒色の瞳をくりくりと動かした。彼女の視線の先には赤いショートボブを揺らしながら歩く小柄な人影が見えている。まるでじゃれつくおもちゃを見つけた子犬のように、全身でうれしさを表しながら、ルーンは走り出した。
「ソーワー!おっはよ~ん!」
「あ、ルーンさん。おはようございます」
大きな声で呼ばれれば、気が付く。色彩学者であるソーワは振り返りながら声を掛けた人物を認め、微笑んだ。その笑みに銀色の瞳がきれいに弧を描き、それを真正面から見る事になったルーンは足を慌てて止めた。
ソーワは色彩学者であると同時に、特殊な瞳の持ち主である。無彩色の中に、幾億の色彩を見ることができるため、彼女の世界は常に色で溢れていた。現に、ルーンが亜麻色の髪を緩くポニーテールにまとめている黒いリボンにも興味深い視線を注いでいる。その様子はソーワにとって当たり前で、少しでも彼女と親交のある人物は幾度となく目にしていた。
「リボン、どんな風に見えるのぉ?」
リボンに目を向けるソーワにルーンは視線を投げかけつつ問う。その質問に弾かれたような勢いでルーンに視線を戻したソーワは歩き出しながら口を開いた。
「七色……とは異なるのですが、一般的な表現だと合っていると思います。光が当たるたびに色味が変化するので、とても綺麗です」
「ソーワにはたくさんの色が見えてるんだものねぇ……。羨ましいなぁ、私もソーワみたいな世界が見えたらいいのに」
ソーワに合わせて足を運びながらルーンは一人語散る。それをソーワは少し視線をあげながら眺めた。銀色の双眸には疑問の色が浮かんでいる。だが、ルーンはそれに気付くことは無く、そのまま足を進めた。
2人の歩いていく方向には見事に手入れをされているのが一目で分かる庭付きの家があった。その家の前のT字路を右に曲がって進むと、学者街の研究室が立ち並ぶ一角につながる。その道はいつものルートだった。
この見事な庭の持ち主が、大きく伸びをしながら家の外に出てきた。長いにび色の髪をまとめあげ、つい先ほどまで庭の手入れを行っていたであろう造園学者のテッシュ・ピジョンヌだ。テッシュはT字路に面する家の庭を愛でると共に、天使の庭と悪魔の庭について研究する学者である。その青色の瞳には勝気な光と、旺盛な好奇心が躍っていて、彼女を好く学者たちは多い。
テッシュとは親交のあるルーンとソーワは、小さな門の前で大きく伸びをするテッシュに軽く手をふった。
「テッシュ、おはよ~さん」
「ルーン、はよー!ソーワもいい朝だな!」
「本当ですね」
「くー、こんな日には外に研究に出かけたいよな……」
机にかじりついて論文などを読むよりも体を動かしていたいタイプのテッシュは、晴れた日は外に出たい性分らしい。それにうんうんと頷き同意するルーン。ソーワはというと、2人とは別の方向に視線を向けている。何かがソーワの視線を引き付けていた。それに気が付いたルーンとテッシュもソーワの視線を無意識のうちに追いかける。
ソーワの視線の先には藪がある。この藪は、テッシュの庭を取り囲んでいる生垣の近くに続いており、生垣の反対側は小道だ。よく猫などが通る通路で、もちろん、人も通れるだけの幅はある。幅は十分にあるが、それでもあまり好んで通る人はいないであろう、暗く湿った路だった。
今、彼女らの目には大きく揺れる藪が映っている。いったい何が出てくるのか。野良猫だろうか。狐だろうか。犬だろうか。それともなにか幻獣だろうか。三者三様の思考が織り交ざっている視線の先の藪は、がさごそと大きな音を立てながら、人影を吐き出した。
「おりょ、スー?」
「スーさん?」
「スー先輩?」
三人はそれぞれ目の前の人影を見つめた後、出てきた人物の名前を呼んだ。
どうやら転がり出てきた件の人物は三人とは旧知の中らしい。いてて、と頭を押さえながら、被っている帽子を押さえながら頭を左右に振った。
「いったぁ、あのやろお、いきなりこっちの事睨みつけやがってー。驚いて落ちただろうが……」」
「ほんほん、スーはまぁた誰かにちょっかい出したんだなぁ~」
「うん?……のぉ!?ルーン、ソーワにテッシュ?」
ぐるる、と唸り声でもあげそうな剣幕のスー・ポートは唐突に、それも近くから聞こえた言葉に周囲を見回した。隣にはしゃがみこんで軽く手を振るルーン、そして見下ろしているのは腰に手をあてていかにも問い詰めようとしているテッシュと困ったような笑顔のソーワ。一瞬にして自分が知人たちに囲まれている事実に気が付いたスーは慌てた。
「いや、これにはひっじょーに、大切な理由がありましてね!」
「先輩はいつでも大切な理由があるとか言いながら、実は全然、ただの覗きじゃないすか」
「なーにを言ってるのだね、テッシュ!男と女の恋愛ザタなんて、立派な研究対象じゃないか!」
テッシュの言葉に取り繕う努力を放棄したスーは、実に明快に自分の行っていた行動を肯定した。スー・ポートは恋愛心理学者だ。もっとも、悪魔の、と言う言葉が前につく。悪魔であるが故に人の心の動きが気になるらしく、男女のほれたはれたの騒ぎがあると知れば西へ東へ走り回り、首を突っ込み嘲り笑うのだ。そうしながらも彼女の葡萄酒色の瞳は常に愛を持っている。だからこそ、彼女は好かれているのだが。
決して恋愛感情を蔑んでいるわけではなく、自身が持ちえないからこそ、愛を持って接している、それがスーの恋愛に対するスタンスだった。
「んなことより、先輩。いーかげん悪魔の庭について教えてくれよ」
「ああああーと、ごめんよテッシュ!向こうに乙女が告白しようとしている気配を感じるんだ!」
「はぁ!?」
「大事な研究対象が居なくなっちゃう前に追いかけるからね!私はこれで!」
「ちょ、先輩!ふざけんな、ウソだろ、それ!」
テッシュは悪魔でもあるスーに顔を合わせる度に悪魔の庭について聞いていた。その度にお茶を濁すスー。今回は本当か嘘か、いまいち判断に困る捨て台詞と共に走り出した。わずかなタイミングの差で嘘と断定してスーの後を追うテッシュ。実はこの2人が繰り広げるこの様子も、よく見られる風景だった。
スーとテッシュが走り去るのを小さく手をふりつつ見送ったルーンとソーワは再び足を動かし始める。いつもの事ではあるのだが、騒々しい2人が居なくなると途端に静かに感じるもので。どちらかというと静かな雰囲気を好むソーワは満足そうな顔をしていたし、ルーンはいたずら好きがネタを見つけました、と目が雄弁に物語っていた。
朝日は学者街の街並みを明るく照らす。そのまま、彼女たちは研究所と研究室が立ち並ぶ区画へと入って行った。
[3回]
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